GOOD DESIGN AWARD 2025
KOLEC × 宮本工業所
葬送一体型台車
「Full Moon」
共同開発プロジェクト
物流の枠を超えた、
KOLECの挑戦
中西金属工業株式会社のKOLECブランドと言えば、ハンドパレットトラックやフォークリフト等「物流現場で使われるマテハン機器」のイメージをお持ちかもしれません。しかし、私たちはその高い搬送技術を活かし、特殊車両や精密機器の共同開発など、多岐にわたるソリューションを提供しています。
今回、葬送設備のリーディングカンパニーである株式会社宮本工業所様と共に取り組んだのは、火葬前のお別れ時に使用する「棺台車」と火葬後の収骨時に使用する「収骨台車」の機能を美しく融合する、「葬送一体型台車」の開発プロジェクトでした。
株式会社宮本工業所について
昭和2年創業。富山県に拠点を置く株式会社宮本工業所様は、国内公営斎場の火葬炉において圧倒的なシェアを誇る老舗メーカーです。単なる設備の製造に留まらず、高度な燃焼制御による「無煙無臭化」や、遺族の心理に寄り添った「葬送空間のプロデュース」において、業界の先駆者として知られています。100年の歴史を持ちながらも、「尊厳ある葬送に相応しい場を提供したい」という真摯な想いを原動力に、常に革新的なプロダクトを生み出し続けています。
宮本工業所 公式サイト
KOLECと宮本工業所の
歩みの歴史
それぞれ異なる分野で日本の近代化を支えてきた両社。その出会いは必然的な技術の共鳴から始まりました。
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1920s - 創業期
中西金属工業、宮本工業所がそれぞれ創業。一方は軸受やマテハン機器、一方は火葬炉という独自の専門技術を磨き始めます。
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2010s - 出会いと技術交流
葬送現場における「重量物搬送」の負担軽減が課題となる中、宮本工業所の空間プロデュース力と、KOLECの精密な駆動制御技術が出会いました。現場を共にする中でお互いの専門性への信頼を深めながら、数多くの棺台車や収骨台車を世に送り出してきました。
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2020s - 共同開発プロジェクトの本格始動
少子高齢化や労働環境の変化を見据え、次世代の葬送インフラを創るべく共同開発を加速。幾多の試作を経て、機能と意匠を究極まで融合させた「Full Moon」が誕生しました。
Full Moon 開発の背景と
私たちが向き合った「課題」
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1. 火葬場が抱える「2040年問題」
全国の火葬場は1950〜60年代の老朽化更新時期にあり、一方で死亡数は2040年にピークを迎えその後減少します。この「前半高稼働・後半低稼働」のジレンマが更新設計を不透明にしていました。
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2. 運営の「非効率」を技術で解決する
「棺搬送」と「遺骨搬送」を1台に集約。保管スペースや充電設備、スタッフの導線設計を劇的にシンプルにすることに挑戦しました。
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3. 効率化の先にある「儀礼性の向上」
1台ですべてが完結すると、スタッフの所作から複雑な動きが削ぎ落とされるため、より洗練された葬送空間の実現につながります。「持続可能性」と「儀式の尊厳」の両立。それがこの1台に託した未来です。
Full Moon の特長
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外装
葬送空間に調和する水平基調のデザイン。宗教に左右されない形状で、導入先に合わせた色・素材の調整も可能な柔軟性を備えています。
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操作系
直感的かつ丁寧な所作を支援するLEDインジケータを実装。格納を考慮した跳ね上げ式ハンドルも搭載しています。
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アタッチメント
別体の祭壇アタッチメントで台車自体が祭壇に。火葬前から収骨まで1台で担い、儀式の統一感と効率を両立します。
GOOD DESIGN AWARD 2025 | 審査委員評価
「フルムーンは、棺台車と収骨台車を一体化し、葬送の動線・儀式性・省スペース化を同時に実現した革新的な火葬場インフラである。高齢化に伴う葬儀件数の増加と、葬儀に関わる労働人口の減少という社会課題に対し、限られた人員と空間でも尊厳ある葬送を維持できる点が大きな特長である。無機質な機械感を排した水平基調の造形は、宗教や文化の違いを越えて空間に調和し、祭壇アタッチメントとの相性にも優れる。葬儀という繊細で社会的意義の高い場面において、構造・意匠・運用のすべてを統合し、新たな火葬場の在り方を提案する本製品は、課題解決と儀式性の両立を実現する新しい標準となり得る。深い配慮と革新性をあわせ持ち、葬送の未来に確かな道筋を示す非常に意義深い取り組みである。」
これからの取り組み
KOLECと宮本工業所は、「Full Moon」の開発で培った知見を活かして、これからも人々の感性に寄り添う新しいマテハンソリューションの開発を続けます。
「駆動制御技術」と「空間プロデュース」の融合や、より高度なユニバーサルデザインの追求を通じ、人手不足に悩む葬送現場の課題解決に加え、あらゆる人が尊厳を保てる社会の実現に貢献してまいります。